「自動化したほうがいい仕事」を挙げてもらうと、多くの経営者や事務担当者は5つも6つも思いつきます。見積もり、日報、問い合わせ返信、資料探し、電話メモ。どれも手間がかかっているのは事実です。ただ、全部を一度に変えようとすると、たいてい途中で止まります。

最初に決めるのは、どれが一番大変かではなく、どれから始めるかです。順番を間違えなければ、小さな会社でも無理なく仕組みを育てていけます。

付箋に書かれた複数の業務候補から、担当者が1つを選んで丸をつけている様子

選ぶ基準は「大変さ」ではなく「頻度」です

いちばん時間がかかる仕事から手をつけたくなりますが、それは遠回りになることがあります。年に数回しか発生しない仕事は、仕組みを整えても効果を確かめる機会が少なく、うまくいっているのかどうかも分かりにくいままです。

先に選ぶのは、毎日、あるいは少なくとも週に何度も繰り返している仕事です。1回あたりの手間は小さくても、回数が多ければ積み重なった時間は大きくなります。それに、繰り返しの多い仕事ほど、試した結果がすぐに見えます。

「判断が多い仕事」は後回しにします

同じ作業でも、金額を決める、特別な事情のあるお客様に個別対応する、といった判断が中心の仕事は、最初には向きません。判断は人が担う部分が大きく、仕組みに任せられる範囲が狭いためです。

最初に選ぶのは、判断よりも「整理する」「並べる」「まとめる」といった作業が中心の仕事です。判断そのものは人が持ったまま、その手前にある手作業だけを軽くするところから始めます。

1つに絞って、1か月だけ試します

候補が絞れたら、それを1つだけ選びます。複数を同時に変えると、結果が良くても悪くても、どの仕事の何が効いたのかが分からなくなります。

一般的な例として、日報の整理と問い合わせ返信の下書きを同時に変えた会社で、どちらも以前より楽になった実感はあるものの、次に何を直せばよいか誰も説明できなくなった、というようなことが起こり得ます。1つに絞り、1か月だけ試せば、うまくいった理由も、うまくいかなかった理由も、あとから振り返ることができます。

うまくいかなければ、やめて戻せば大丈夫です

1つの仕事で試している間は、他のやり方を大きく変える必要はありません。試した結果が合わなければ、元のやり方に戻すだけです。1か月という短い期間で区切っておけば、うまくいかなかったときの後戻りも簡単です。

うまくいけば、その仕事で得た「どこまで仕組みに任せ、どこを人が確認するか」という感覚を、次の仕事にも使えます。会社の手作業を減らす仕組みは、一度に完成させるものではなく、1つずつ確かめながら広げていくものです。

まずは、いま挙げている候補の中から、いちばん繰り返しの多い仕事を1つだけ選ぶところから始めてみてください。